2014年5月7日水曜日

『それでも世界は美しい』

 いささかスルーされている方が多いような感じは否めないのだが、私としては”それセカ”こと『それでも世界は美しい』を全力で推したい気持ちが溢れんばかりな今日この頃である。まあ、『蟲師 続章』も『一週間フレンズ』もいいんだけれども。




 本作は白泉社の“花とゆめ”に連載している同名少女漫画が原作である。ざっくりとした筋書きとしては、小国のお姫様が政略結婚で大国の年下な王様のもとへ嫁ぎ二人が関係を構築していく過程のなかで、内部の対抗勢力との駆け引きと絡まり合い国家という大きなスケールの話へと展開する。監督は近頃では『ルパン三世VS名探偵コナン』を手掛けた亀垣一監督だ。アニメーション制作はstudioぴえろ。亀垣監督×ぴえろ×少女漫画という組み合わせでは『ふしぎ遊戯』や『妖しのセレス』、『花咲ける青少年』に続く作品となる。まったくの余談で私個人としては『妖しのセレス』が特にお気に入りであったりするが、三作ともネット配信が行われているので機会があったら自分のお気に入りを見つけてみて欲しい。



 

 さて本題に戻ろう。本作はインパクトの強い何かがあるわけではないし、前衛的な表現や構成を試行している作品とも言えない。むしろ一つ一つの基本的な設定そのものは良く言えばこなれた、悪く言えば使い古されたものだと思う方もいるだろう。しかしながら作品世界の基礎骨格をしっかりと築いた上で、“それはこういうものだ”という安易なお約束を避け、事態の展開に納得のいく裏を付けて丹念に積み重ねていくストーリー構成から出てくるものは、予測不能な到着地。筋書きで説明するとシンプルなのに視聴者側からは先が読みにくい。さらにこのことを実現するために支えているのは、やはり奇をてらってはいないが丁寧で質の高い映像・音響演出、作画、撮影技術、そしてもちろん高い演技力を持つキャスト陣。フラットなようでいて舞台となる晴れの大国の乾いた空気と強い日差しを感じさせる平常時の光、ヒロイン・ニケ様のアメフラシの術による雨のシーンでは湿度感とともににわか雨特有の臭いを思い起こさせる。少女漫画の十八番と言ってもいい繊細な心情描写や、コミカルなラブコメシーンも内包され作品として豪華でもある。それと本作の視聴者層を極端に絞っていない点は好感が持てる。逆に言えば深夜とは言え時間帯が遅すぎるとも言える。そもそも深夜帯であることに少々疑問が湧かないでもない。





 さてごちゃごちゃ言えども、アニメとしてはキャラクターも気になるところ。どうしても個人的な意見になってしまうが、ヒロインのニケ・ルメルシエは文句なしに可愛い。王であるリヴィウス一世も美少年面で冷酷、でも冷酷なのにはしっかりと背景がある。そしてこの二人はまとめて可愛い。秘書官のニールも杉田さんの演技と相まっていい味を出していて、周りのキャラクター達も親しみやすくかつ個性十分だ。また綺麗で丁寧でありつつ、決して硬くならず豊かに表情を描いている作画もすごくいい。


 まあ、そんなこんなで原作を大人買いするのは近い将来確定している感じである。それにしても“お約束を避ける”と言うと『B-伝説 バトルビーダマン炎魂』を思い出す。炎魂は競技玩具アニメ(男児向けホビーアニメ)の定石、お約束を徹底して裏切り続け、毎週驚きの連続と先行きの見えなさに振り回された。まあどちらかというと前衛的であったが、当たり前の約束事を疑ってみるのは重要なことと言えるだろうか。もちろん選択した展開にはある程度の裏付けは必要であるだろうが。・・・しかし炎魂、二クールもの間全くしゃべらないキャラクターというのもまた尖がっていたもので。アキュラスさんね。


作品公式サイト

『それでも世界は美しい』

バンダイチャンネル内の各作品ページ
『それでも世界は美しい』
▼ 『ふしぎ遊戯』
▼ 『妖しのセレス』
▼ 『花咲ける青少年』

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