2014年6月8日日曜日

S・J・ボルトンが面白い

 先日、創元推理文庫『毒の目覚め 下 S・J・ボルトン 著 / 浅村里絵 訳』を読み終えた。ここまで『緋の収穫祭』、『毒の目覚め』と読み、次は『三つの秘文字』。順番が逆とか言わない。三作すべて同著者、訳者である。

 共通するのは〈閉鎖的な社会〉、〈所在のわからない悪意〉、あとは〈魅力的なヒロイン〉か。閉鎖的な社会というのは小さなコミュニティの秘匿性、主人公や読者には〈約束事〉がわからないため振り回される。ここで効いてくるのが二番目の所在のわからない悪意。はたしてそれが本当に悪意なのか否か、ということがやはり約束事を知らない側には判断がつかない。そして魅力的なヒロイン。何かしらの専門医であり、身体的な傷からくる精神的な痛み、そして諦めの悪さ。それらはミステリーとしての推理や、群像劇、クライマックスでの盛り上がりへ繋がってゆく。

 また『毒の目覚め 下』の巻末に穂井田直美さんが寄稿文で記されている”前作よりも視覚的でダイナミックな描写”という視点を借り、次に来る『緋の収穫祭』を捉えると、光と影を感じる作品となっていてさらに映像的に感じられる。そして既読の二作品ともにホラーの要素が多く詰まっているのであるが、『緋の収穫祭』においては現実感が揺らぎ、虚構との境界線がわからないような描写が次のページへと駆り立てる燃焼剤となり、作品世界に引き込まれてゆくのだ。

※Tumblr版からの修正版。現在「三つの秘文字」を読み進め、追記すべき事柄もあるが、それはまた別の機会に。

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